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大魚に夢を託して ― 鴻池龍朗さん

2002年12月11日

サンパウロ在住 美代賢志


写真を手に熱く語る鴻池龍朗さん

 世界最大の有鱗淡水魚、ピラルクー。このピラルクーを食用として、しかも温帯気候のサンパウロで養殖を試みている日本人がいる。水産養殖コンサルタントの鴻池龍朗さんである。数年間の学術調査の後、IBAMAから研究許可を得て飼育実験を開始した。これが実ってこのほど、養殖許可が下るに至った。鴻池さんは、「淡水のシーラカンスとも言われる古代魚。何億年と姿を変えていないその生命力、成長の速さに着眼した。味も申し分なく、世界の食糧難を救う未来の魚」と言い切る。わずかな餌と狭い飼育池でも育つという生産性の高さに加えて、味の方も申し分ないという。これが、鴻池さんの中にある、養殖者としてのプライドに火をつけた。そしていよいよ、この成果が、サンパウロ市リベルダーデ区のレストランでメニューとして登場する。この大魚に夢を託す鴻池さんに、話を聞いた。


美代 ピラルクー養殖という着想は何年ごろ、どのようなところから得たのでしょう。

鴻池 最初に研究を始めたのは97年ごろです。着眼したのは、まず成長が早いということですね。1年で体長1メートル、10キロほどになります。それから淡水の有鱗魚、つまりウロコのある魚では世界最大です。最大で4m超えるとも言われています。それからこの魚は、1億年以上も姿を変えずに生き続けてきた古代魚です。淡水のシーラカンスとも言われていまして、それだけに生命力が非常に強い。水中の酸素が完全になくなっても生き延びます。また、普通の魚なら成長がストップするような窮屈なスペースで育てて大きくなります。

鴻池さんが約170cmにまで育てたピラルクー
(鴻池さん提供)

美代 では、これまでピラルクーの養殖が一般的に行われなかったのはどのような理由なのでしょう。

鴻池 絶滅の危機に瀕した幻の魚として規制が厳しかったことなどもあるでしょう。また、生き餌しか食べないと言われていました。あと、我々が開始する前はサンパウロでは越冬できないだろうと言われていました。


美代 実際の飼育で苦労された点は、どのようなところですか。

鴻池 やはり、ほとんど生態が知られていないという点です。産卵も、目撃談などはありますが、実際に写真などで提示した人はいませんから。生餌からどのように養殖用の餌に切り替えるかという点も、試行錯誤です。またサンパウロの冬場など寒い日は、ボイラーで炭をおこして水槽の壁を暖めるという工夫で解決しました。さらに、これが一番のネックなのですが、繁殖させるかという点だけはいまだに解決されていません。


美代 暴れて飛び出るなどということはないのですか。それに、大きくなると出荷のための捕獲も大変という気がします。ピラルクーというのは、巨体の割には案外、おとなしい魚なんでしょうか。

鴻池 成長の具合を記録するために捕獲しようとすると、体当たりなどしてきます。出荷の時なら弱らせてからという方法もあるでしょうが、記録の時は大変です。また、普段でもジャンプすると1メートル以上も水面から飛び上がったりします。養殖池ではネットをかけて、飛び出ないようにしています。1メートルぐらいのを捕獲するとなると、それはもう、ド迫力です。この手(写真の右手首に見える包帯)も、ピラルクーにやられました。(笑)


美代 ところで、味の方はいかがですか。私は、もうひとつ、という経験だったのですが。

鴻池 アマゾン地域では一般的に、塩漬けにされています。これはあの広大で高温の地域を、冷凍設備がカバーできないということも理由だろうと思います。はっきり言いますと、塩漬けと生では、味に天と地ほどの差があります。もちろん塩漬けでも、身が分厚いですから、うまく作らないと中のほうが腐ってしまうことがあります。塩漬けを食べられて妙な臭いがするとか、そういう場合は痛んでいるということが多いですね。そこで生の味はと訊かれましても、そちらの方は専門ではありませんので(笑)。ただ、白身であっさりしていながらコクがあるといいますか、口に入れた瞬間に濃厚な味が広がるのですが、いつまでもネットリと脂っこくないという感じです。1メートルぐらいの大きさになりますと、身も締まってきまして非常に美味しくなります。さらにデータで言いますと、第2次大戦後、50年代から60年代ですが、年間2000トンが主にヨーロッパへと輸出されています。実際には公式データ以外にも、闇で売買されたものもあるでしょうから、この数字はもっと大きくなるはずです。つまり、土曜日曜も満遍なく輸出されたとして、毎日5トン以上が船積みされていたのです。おいしくなければ、これだけの人気商品になりえなかっただろうと思います。


美代 今後の課題となると、どのようなところでしょう。

鴻池 繰り返しになりますが、繁殖ですね。現在、ピラルクーの養殖でもっともコストがかかるのが、稚魚の買い入れです。熱帯魚用に販売されているものを購入して飼育するわけですから(笑)。養殖するには、やはりこれを解決する必要があります。またこの部分の解決なく、養殖と呼ぶのもおかしいという気持ちです。


鴻池さんのサイト「ピラルク養殖のすすめ」はこちら

ピラルクー料理は、サンパウロ市リベルダーデ区のレストラン「ごんべ」で食べられます。

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