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サンバがブラジル・サッカーを救う?
2002年5月21日
サンパウロ市在住 美代賢志

 なぜか日本では「ブラジル代表の愛称」と誤った説明がなされているセレソン(Seleção)。本当は(国の)代表という意味なので、「日本のセレソン対ブラジルのセレソン」などという使い方もすれば、サッカー以外にだってセレソンはある。そしてその、サッカーのブラジル・セレソンが低迷している。格下相手に苦戦、失点、はたまた敗戦と、良いとこなしの状態が続いた挙句…何とかW杯出場だけはできたのではあるが。

 今回のW杯、ブラジルはいったいどうなるのであろうか。早朝午前3時半キックオフ(当地の時間)、なんて試合もある。眠い目をこすりながらの観戦・応援である。そんなにまで国民の期待を受けていながら、果たして勝ってくれるのであろうか?

 まぁ、期待と結果が一致しないのは、人生の一大柱なのではあるが。

 そこでブラジルの復活を願って、私が以前ブラジル人からバカにされた持論を展開してみよう! 我ながらエエ着眼点だと思っているのだが、ブラジル人でこの持論を支持してくれた人は、今のところゼロ。ということで、セレソンのスコラーリ監督の耳にも、私のセレソン改造計画案は届いていない。

 私の鋭い観察眼からすれば不甲斐ない現在のブラジル代表の現状は、ブラジル国民のサンバ離れと無関係ではないと思っている。その理由は、スポーツにしろ何にしろ、体を動かすこととリズム感は無関係ではないからである。アップテンポのロックを聴きながら毎分120字のタイピングはできても、「炭坑節」を聴きながらでは難しい(はずだ)。

 そこでサンバ。

 音楽の細かいところはよく分からないが、サンバのリズムを支えるスルドという大太鼓は、2拍子。そこに細かいリズムが重なる。この2拍子に馴染んだ人なら、2ステップで新しい動きに(フェイントやドリブルの変化に)対応できる。が、ロックなどの4拍子に馴染んだ人では4ステップ。つまり変化に対応するのが遅れる、というのが骨子だ。ちなみにワルツは3拍子である。そしてこの音楽のステップを、体のリズム、つまり足のステップと置き換えてもらえれば分かりやすいはずだ。

 つまり、ロックで育った世代はサンバ世代と比較して、基本的なリズム感で劣る。これがセレソンの実力低下につながっているというわけ。別にサンバに惚れているというほどではないが、私はぜひ、ブラジル政府にカーニバルの規定を変更してほしいと思う。つまり現状では8月以降となっているエスコーラ・デ・サンバ(リオやサンパウロで言うところの、サンバのチームのことです)の活動を、1年365日に改めて欲しい。そしてサッカー選手には、行進の日以外、例えば練習の日にもエスコーラに参加してリズム感を涵養して欲しいと思う。

 かつて、ゴールを決めた三浦和良選手のゼスチャーは、サンバのステップであった。その踊りが上手いか下手かについては意見が分かれるが、ドリブルに関しては上手かった(と思う)。

 とはいえ、サッカーの戦術はドリブルだけでは決しないのも現実だったりする。

 写真は、94年のW杯決勝戦でパウリスタ大通りに集まり巨大スクリーンを眺めて観戦する人たち。優勝が決定した瞬間。国民の皆様の喜びようと言ったらもう、すごかったです。ブラジル到着直後、最初の仕事が休日出勤のコレ。私の背後にある巨大スクリーンを眺めて応援しているのだ。おかげで決勝戦は、まったく観戦できなかった。しかも大混乱を避けるためか、従業員の観戦のためか、途中から地下鉄は運休。カメラを担いでトボトボ、歩いて帰宅したのでした。翌月曜に初めて出社した私は経理の方から、「あなた、今日から出勤の新入社員の方ね?」と言われて憤慨したのでした。もちろん、こんなエエ加減は日常茶飯事だったのですけど(笑)。

娘さん(前列右)以上のオカーサンの気合(前列中央)を見てください。
後ろにも大勢の人たちがパウリスタ大通りを埋め尽くしたのでした。

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