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ほめ殺し

2003年3月24日

サンパウロ在住 美代賢志

 米国という民主主義の先進国というのはありがたいもので、例えば日本においては第2次大戦後、米国から世界に誇るべき平和憲法まで頂戴した。いかなる戦争をも忌避する平和を基礎とした精神を日本人に涵養していただいたことで、国際社会における政治的戦略のひとつとなるはずの自衛隊の活動を制限するという、国民的な思想統一につながることができた。今回の米国によるイラク攻撃でも、こうして日本の地位は一層、低下するという効果も発揮している。小泉首相がイラクを攻撃する米国の支援をコメントしても、世界から日本が忘れられるほど地位が低下していることで、テロの標的にもなりにくいだろう。まことに米国の配慮というのは、先見の明があり、感謝してもしすぎることはない。

 自衛隊に限らず、国のために尽くすという行為が批判される今の日本の風潮は、グローバリゼーションが叫ばれる時代にあっては、日本人が世界人たる素質を備えるのにも好都合である。日本人の博愛主義は、イラクのフセイン政権のために人間の盾という行動をとることにまで現れている。本来この戦争は、イラクと米国、両国の「国連軽視」をこそ指弾すべき問題だったもの。ところが国家にとらわれない世界人としての日本人には、国家が集まって形成された国連すら排除すべきものとの考えに至ったのだろう。多数の人間を殺してきたフセインすら、愛すべき「1人の人間」なのである。日本人のこうした国際感覚が生まれたのも、まさに米国のお陰。だからこそ、イラクを攻撃する米国を感謝してもしすぎることはない。

 前回の湾岸戦争では多額の費用を負担、終戦後に自衛隊が機雷を掃海したものの、ほとんど話題にも上らなかった。今回の支援は戦後復興に対する協力だそうで、前回のように自衛隊員を命の危険にさらしながら評価されないということも、少なくなるかもしれない。しかも米国政府はすでに石油部門を中心とした戦後復興を行う米国企業を決定しているといわれており、日本の援助は純粋にイラクの復興だけになりそうだ。そうであれば米国のお陰で、「石油利権がほしいがための復興支援」などと日本が後ろ指をさされることもなく、純粋な平和追求という看板を掲げさせていただける。平和国家日本にとっては、まさに願ってもない国際貢献である。

 帝国主義などと、ここブラジルでは米国を批判している。しかし米国の掲げる自由と民主主義の恩恵を受けてきた日本からすれば、米国による世界支配は、平和運動を内外に示す格好の土壌が形成されつつあるものとして、歓迎すべきものであろう。日本国民よ、米国に足を向けて寝るべからず。もっとも、地球は丸いということをも忘れるべからず。

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