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困る質問(2)

2003年3月31日

サンパウロ在住 美代賢志

 以前に「困る質問」で書いたように、なぜブラジルに来たのかと訊かれると困る。

 同じように、どのようにブラ妻と結婚したのか?と、よく聞かれる。こちらの質問は、一体ゼンタイ、ブラジルに来るところから話すべきか、知り合ったところから話すべきか、それとも単に、結婚手続きに関して話すべきか…。実に困る質問である。

 そう言えば確かに、新聞社の後輩にも「ブラジル人と結婚してブラジルに永住したい!」などという人もいる(これは途上国のオネーチャンが、日本人と結婚して日本に行きたいなどと言っているのと同根なのであるけれど)。聞き手がそうした観点から質問していると考えるならば、実に簡単に答えが出そうだ。が、そうでもない。というのもこの場合は、「どうやったらブラジル人にモテるのか」と聞いているのと同義だからだ。だって、「結婚すること」だけが目的なら、任意に選んだ誰とでも結婚すればよいのである。

 さて。

 サンパウロのサンボードロモ(カーニバル会場)は、カマロッテと呼ばれる升席やテーブル席のようなものと花道の間に、幅70cmぐらいの歩道のようなものがある。取材するカメラマンが往来したり、関係者が退避したりするスペース。ここにいるカメラマンは、カマロッテの客からすれば目触り千万なのだが、便利なことがひとつだけある。羽飾りなど、衣装や山車から落ちた飾り付けを拾ってくれるのである。私としても、迷惑をかけているのだから、それぐらいのサービスはする。観客はほとんどの場合、カメラマンが歩道を歩いている時に服を引っ張るか腕をつついてくる。大音響でサンバが演奏されているのだから、声を掛けたぐらいでは聞こえない。

 この時は、腕を掴まれた。とくに目ぼしい飾り付けが落ちていたわけでもないので、ちょっとびっくりした。どちらかというと背の低い、金髪のオネーサン(というか少女)であった。ビール会社がスポンサーになっているカマロッテのモデルさん(というかサクラか?)。

「な、なんや?」

 何か言いたいことがあるのか、手招きされた。で、耳元で何か言ってくるのかと思ったらキスされた。「ははは…」と、脱力的笑いの後、とりあえずお礼だけは言ったのだが…。この女性は帰り際にまた私を見つけ、ほっぺにキスしてきたので、さらにビックリであった。間に柵があったから良かったものの、これが無ければどうなってたことか…。

 「俺は結婚を早まった!」と、帰宅してちんちくりんのブラ妻に報告すると、大爆笑。「そりゃ、男を見る目がない女だ」とまで言って、笑い転げる始末。確かに、マトモな女性ではなかったろうが、少しは妬けよ。

 ちなみにこの話は、ブラジル人カメラマンやら会場のマスコミ担当者にも大うけだった。イストエ誌のカメラマンなどは絶妙の反応で、こちらも爆笑ものだった。ポルトガル語でないと味が出ないのが残念だが…こんな感じ。

「おわっ、おいしい思いしたなぁ。俺なんて一晩中、働きづめよ」

「それが不思議なんだよね。どうしてキスされたか、理由が分からんのよ」

「むふ。俺は、分かるけどな。その娘の気持ちは…」

「いや、だってさ。そのモデーロ(モデル)は、男と一緒だったぜ」

「そいつぁ…。俺たちと違ってモデルノ(モダン)だったのさ(笑)」

 世の中、スッキリ割り切れるモンでもないところが、人生の楽しみなのかもしれない。答えになっていないけれど、今回はこれにて。

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