Home l 談語フォーラム l リンク l カタカナ表記について l サイトについて l ご意見

貴卑コラム l 作ってみようブラジルの味 l 迷訳辞典 l ブラキチさん いらっしゃい! l 何でもブラジルデータ

誰が声を拾うのか

2005年4月16日

サンパウロ在住 美代賢志

 16日が、文協会長選だそうだ。日系社会の辺境者の私は、昨日、この事実をH氏から知らされた。

「今、コロニアの将来を真剣に考える時が来てるんだ」

 と、H氏は臆面もなくコメントするのだった。コロニアなんて相手にしない人だと思っていたが、よく考えると、ブラジルをよく知る任侠的日本人というのが、これまでから彼の売りだった。まぁ、ブラジルに関する知識の底は、かなり浅いんだけど。で、その彼が、某候補者のために前日まで、熱心に票固めに奔走している。いい加減なマーケティングが売りのH氏だから、今回も、相手が受け入れやすいアイデアを適当にパッケージング化して、金儲けしようともくろんでいるんだろう。実際、H氏のいうコロニアって、「文協の組織と建物を中心にしたヒエラルキーを信じている人たちの妄想の集合体」という以上のものじゃないみたいだし。

 だけど、息子さんが大学を卒業したというH氏と違って、私の場合は、コロニアの将来を真剣に考える前に、娘の将来のことを真剣に考えなきゃいけないというのが現状。小市民ですみませんね。

 それで最近、あらためて興味深く思っているのは、視野の広い、あるいは懐の大きな人を育てるのって、どんな要素が大事なんだろう?ということ。ブラジル三○物産の元社長であるベンさんは、1度しかお会いしたことがないのだけれど、実に大きな影響を受けた。視野の広さと企画力、さらに実行力がすばらしかった。進出企業の社長でありながらブラジルの日系社会の人たちとのつながりも強く、しかもズケズケと直球でものを言う方だった。今、ご隠居されて(表向きには)日本語新聞を通じてあまり発言が伝えられてこないというのは、実に悲しむべきことだと思う。今でも、「この件に関してベンさんなら、どんな風に考えられるかな?」と、想像してみたりする。

 こういう人は、仕事柄、広い視野が身についたのか、それとも元々広い視野を持っていたからこういう仕事に就いたのか、どっちなんだろう? ネットの世界では、ベンさんに似た経歴とスタイルの人として散人先生(橋本尚幸さん)がおられる。ブログ化される以前からのファン。「日本人はなぜ過去の歴史を正当化しようとするのか?」というのが、最近のヒットだった。かなり以前、サンパウロ新聞のNさんが、「日本政府の謝罪外交はむちゃくちゃだ。ブラジルにいる俺たちまで肩身が狭くなる」とおっしゃっていたのだけれど、当時の私にはピンとこなかった。その発言の本質が、文章として明示されている。散人先生はブラジルに足を運ばれておられないようで、それがちょっと残念というか不幸中の幸いというべきか。現実の世界で取材なんてしようものなら、私なんぞ、罵倒されていたかもしれない(笑)。

 ちなみにベンさんの場合、私が敵意丸出しで取材に赴いたのでありましたが(取材の申し入れを快く受けていただき驚いた)、すぐに魅了され、意気投合どころか「こんな方に会えてよかったよ」と、幸せいっぱいで帰途についたというのが実態。

 そういう意味では、ブラジルのエキスがつまった知的日本人たちがワイヤードされておらず、文字通り物理的な世界の人からは未発掘の状態で月日を重ねているというのは、悲しむべきことだと思う。何とかならんもんかいな。

 そういう人に(直接であれ間接であれ)インターネットを通じて何らかの意見を発信してもらうということは、日系社会の将来を東洋街の居酒屋で憂慮するよりは、非常に有益なことではなかろうか。しかし往々にして、当地の日系メディアに取り上げられる声は、居酒屋の憂さ晴らしの方なのである。

安物ガラス細工。ぱっと見は美しかったが、写真で見るとかなり気泡がある

貴卑コラム目次 l ページトップ

当サイトに掲載の文章や写真、図版その他すべての著作権は、断りのない限り美代賢志個人に帰属します。

Copyright (C) 2005 Kenji Miyo All right reserved.