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舌の根も乾かぬ内に新たなデジカメ(3)

2003年1月14日

サンパウロ在住 美代賢志

 色々書いたところで、本題のお気に入りの部分も書いてみよう。

小型軽量
 「おいおい、A1はでけぇよ!」という声が聞こえてきそうだが、私が比較するのはレンズ交換式のデジタル一眼。ま、E-10/20との比較でもいいが。カバンに放り込め、毎日持ち歩ける大きさ。

バッテリー
 バッテリーは予想外に長持ちする。ただし、アラームが出るとバタリと落ちる。このあたりは銀塩と使用感を統一しているのかもしれない(銀塩では普通、アラーム=電池交換)。ひとつのバッテリーでA1を運用している人はまさかいないだろうと思うし持ちも充分なので、現実問題としては問題ないだろう。それでも、パーセント表示はできなかったのだろうか? 長持ちしすぎで充電を忘れる、という可能性もある。通常なら、例えば旅行なら1日の行程でも予備は不要。撮影が中心の旅行なら、予備を1個用意していればOKだろう。

内蔵フラッシュ
 前述の通り、私にはゼッタイ必要。その昔、「フラッシュに限っては、大は小を兼ねる。内蔵フラッシュなんてヤワなモンはいらねぇよ!」などといきがって言っていた頃が懐かしい。ただしA1の内蔵フラッシュはケラレを避けるため、広角側でフードは外さなければならないところは困る。フラッシュを起こせば発光、倒せば発光禁止、というのは分かりやすくていい。
 内蔵フラッシュに関しては先日、朝日新聞のカメラマンと会話した時にも「何でそんなモンがいるの?」というような顔をされた。しかし例えば海の家などのゴチャゴチャした状況の日中シンクロなどでは、外付けフラッシュでは影が大きくなってしまう。ココの実を大型ナイフで割る瞬間を捉えようとすると、このナイフの影が顔や変なところに出たりする。こんな時は、内蔵フラッシュのほうが美しく撮影できることが多い。
 内蔵フラッシュ否定派は、過去の私も含めて「食わず嫌い」じゃなかろうか。

手動ズームと深いレンズフード
 深いフードのおかげで、レンズキャップは不要。電源を入れてカバンに入れておけば、カメラを取り出しながらズーミングし、構えた瞬間に撮影できる。何しろブラジルでは、ショッピングセンター内での撮影はできないことが多い。私は警備員にしょっぴかれたことすらある。また治安のよろしくない地域で撮影しなければならないこともある。居合いのように撮影しなければならないことが多いので、この2点は、私にとって非常にうれしい。あと、AFの性能も不安要素だったが、S-AFに限れば、「食いつき」、「合焦能力」ともに及第点(今のところ)。エラー時の見切りも早く、好感が持てる。

FFP
 フォーカスポイントを好きな位置に移動できるFPPは、なかなか便利だと思った。が、縦または横に直線に動くだけで、斜めに一気に移動させることはできない。なぜ? それでも、スナップである程度追い込む程度の実用性は十分ある。完全に一致させようとポイントを移動させるのではなく、フォーカスロックと併用するとストレスがたまらない。ちなみに銀塩一眼では、私は基本的に中央1点しか使わない。ワイドエリア嫌いの人にもお勧めの機能だ。

手ぶれ補正
 手ぶれ補正は、かなり有効だと思う。銀塩ではF1.4〜F2、望遠ならF2.8のレンズを中心にしているので、もう少し明るいレンズが欲しいと思う時もある。が、コンパクトネスとの兼ね合いからは妥協すべきところか。そもそもC-2000Zでも、1/4などというシャッターを手持ちで切っていたのだから、手ぶれ補正はうれしい。28mm(相当)側では、私の場合、1/10程度でも余裕。想像以上に利いてくれる。

通常露出でRAW撮影、−2EVの減感現像。
これでは分かりにくいが暗部も諧調があり
ノイズもほとんどない。もちろん手持ち。

最短撮影距離
 これに関しては、マクロモードに切り替えない場合は「イマイチ」という評価が多く、ちょっと不安だった。結果的には、銀塩でもマクロレンズの出番が少なかった人なら心配無用。「A1をマクロモードに切り替える場合というのは、銀塩で言えばマクロレンズに交換する必要がある時」と言えば、通常の近接撮影能力が分かっていただけるだろうか。通常撮影では、マクロモードに切り替えるシーン、あるいは最短撮影距離により撮影が制限されてしまうシーンというのは、ほとんど無いだろう。問題となるのは広角側だろうが、マクロモードへの切り替え自体はワンタッチでできるので問題ない。

マクロ撮影
 ほかのカメラは知らないが、C-2000zと比較する限り、その差は歴然としている。主に昆虫写真(これは私にとっては本業じゃない遊びの写真)などだが、驚くべき生産性の高さである。銀塩と比較すると操作性最悪のEVF+マニュアルリングで撮影するのだが、銀塩で悩まされた紙のような被写界深度の問題もオサラバ。さらに液晶画面という同じ土台で勝負するC-2000zと比較しても、「どこにピントがあってるの?」などと悩まされた問題がかなり緩和されている(液晶の違いというより、被写界深度の違いなのかもしれない)。ひたすら撮影し続けて使えるカットを選んでいたという従来の悲壮感はなく、「ついでにちょっと撮影してみました」という雰囲気でカットをモノにできる。本気でマクロ撮影する気の無い私には、すばらしい。本格的にやりたい人には、フォーカスの操作性などで物足りないのではないか、とは思うが。

ダストフリー
 とまでは言い切れないかもしれないが、「カバンに放り込む派」の私には、高倍率のレンズ一体型はうれしい。

各種設定と登録
 基本的な設定は迅速なアクセスが可能であり、加えて好みのモードを5種類登録できる。私の場合、基本モード、自宅でのバウンスフラッシュ、スローシンクロ(後幕シンクロ)、ワイヤレスで登録している。のこりひとつは、遊び撮影の設定をしている。ただ、登録呼び出しボタンが別にあるほうがうれしい(それほど頻繁に切り替えはしないが…)。というのは、シーンモードはブラ妻が使うため、これに割り振ることができないのだ。

豊かな諧調
 夕景や夜景など、明るめにRAW撮影して減感現像することで、ノイズはかなり押さえることができる。しかも諧調はなかなか豊か。白飛びもしにくいようだ。

立体感のある雲の描写はなかなか。補正なし。

 

そこで、デジタル一眼への要望なども

 A1の画質は、好みの画質に追い込むための「いじり倒し前提」といわれている。まぁ、実際に見て「キレイなぁ…」と、最大公約数的にホレボレする写真がオートで撮影できるということは少ないのだろう。私自身、メーカーのサンプル画像を見て愕然としたクチである。

 その代わりと言っては語弊があるが、「いいタイミングで撮影できたなぁ」と思うことは、多いと思う。タイムラグは銀塩一眼の普及機程度はあるわけだから、ここで言いたいのは携帯性と操作性を含めた総合的な機動力によって得られる写真、そのタイミングという意味だ。撮影したいと思った時、即座にカバンからカメラを取り出し、撮影できる。銀塩フラグシップのように、「ん〜、公衆の面前でこのカメラ、出してOKっすか? 後で強盗とお近づきになりませんか?」なんて迷いは(あまり)抱かない。小さい上に操作性が良いため、素早く撮影が終了するからだ。

 ノイズは、パソコンの画面で見る限り結構ある。これは、購入前にサンプルを見た印象とほぼ同じ。私の場合は、写真(紙焼き)や雑誌等に掲載して目立たなければOKなわけで、このあたりは実用性能として割り切っている。デジタルカメラに対しては、もともとが、それほどdpi値の高いものを必要としていないためだ。

 そこで「パソコン画面で目立つノイズは紙焼きでも目立つのか?」ということで件のサイズ(10cm×15cm)に親ばか写真を引き伸ばしてみた。ま、自分の子供はことさらカワイイ、というのを差し引いたとしても、C-2000zの画質に不満を抱いていたブラ妻は、「これならフィルムはいらないぐらい」と、えらくお気に入りだった(写真には無知だが、それぐらいの目はある)。同じ写真を、元フジフィルムのプロラボ技術者に見せたところ…「髪の毛の質感など、これくらい出れば(画質的に)充分じゃないか。これなら半切程度には余裕で大きく伸ばすことができるような気もする。ナチュラルな色はいい線いってる」と、かなり高く評価していた。私自身は四つ切が限界じゃないかと思うのだが、こればかりは実際に引き伸ばすまでは何とも言えない。

 そのノイズに関して言えば、暗い状況で感度を上げるとかなり気になる。しかし、あえて名前は挙げないが、このノイズを消すサードパーティーのプログラムも存在するし、その効果は「劇的」。シャープネスも損なわれない。このプログラムが消去するのは暗部ノイズだから、「本来ならカメラ側で消去可能」なはずだ。コニカミノルタにはもうひと踏ん張りして欲しいところ。ただ、このプログラムを使いこなしているとは言えない状況であえて判断させてもらうと、使わないことが良いこともあるシーンもある。それは肌の質感であったり、コンクリートの打ちっぱなしの壁の質感であったりする。ノイズを消すことで反対に、ミノルタの絵作りのポリシーも理解できた。このあたりは、元フジフィルムの技術者が高く評価したとおりだろう。そして、シーンに応じてこうしたプログラムを利用すれば、A1のポテンシャルを最大限に引き出すことができる。

 もちろん私的には、デジタルカメラを画質最優先で選ぶなら、このカメラの改良版ではなくレンズ交換式の一眼デジタルを迷わず入手する(ことになるはず)。このカメラに多くを求めすぎると、撮影力優先プロダクトとしてのバランスが崩れると思うからだ(しかも前述の通り、紙焼き写真としての画質的にはいい線を行っている)。ほかに代替機種が存在しないという珍しいカテゴリーのA1だけに、そのあたりは割りきりが必要じゃないかと思うが、どうだろう。そして私がA1より上のクラスを求めるなら、仕事ではなく趣味の部分として、である。このあたりは(たぶん)コニカミノルタも理解していて、早晩、趣味人が納得するレンズ交換式デジタル一眼を出すに違いない。ということで、どこまで開発が進んでいるのかは知らないが、デジタル一眼に対して私は、以下のような要望を抱いている。

EVFより光学ファインダー
 「EVFだからリアルタイム・ヒストグラムなどの表示ができる」という擁護派がいるが、筋違いと思う。もちろんA1のEVFは必然の機能であるから容認できる。しかしながら従来のフィルム一眼レフをベースにしたAPSサイズ以上のデジタル一眼なら、ファインダーブロック周辺に余裕があるはず。個人的には、M型ライカのブライトフレーム(あるいは光像式照準)の原理を参考に、画面内表示は実現できると考える(画面内に表示させなければならないかどうかの議論はおいといて)。ペンタプリズムの底辺部分を斜めにザックリとブロック分けして反射(光路に割り込み)させてみればどうだ?(その前にα-9は、プリズム前面から表示を割り込ませたりしているわけだが) 明かり取り窓は、外光カラーメーターも兼ねればスマートじゃなかろうか(薄暗い時のバックライトとの兼ね合いはどうすんだ?>オレ)。
 「だとしても、CCDに光があたらないんだから無理じゃねぇか!」という人もいるだろう。しかし、ペリクルミラーと液晶シャッターで解決できないのか? AFは当然、撮像AF。位相差AFによる微妙なピントずれの問題も解決できると思う。それとも、APSサイズの撮像素子は物理的なシャッターがないと作動しないのか?
 そう言えば、ミノルタ一眼には、透過液晶でフレーム内に情報を表示する機種もあった。
 液晶シャッターとCCDをユニット化することで気密構造にすれば、CCD交換式デジタルカメラ、というコンセプトも実現できると思うのだが。それにローパスフィルターよりも液晶シャッターの外面(レンズマウント側)のほうがCCDからさらに遠いわけで、埃も目立ちにくいだろうと思う。

可動CCD
 DiMAGE A1は、CCDをシフトさせることにより手ぶれを補正している。しかも発表会の作動デモ(動画)を見ると、かなりの移動量を確保しているようだ。ならば、チルトやシフトなどの撮影技法を反映できるものにしてはどうかと思う。レンズのイメージサークルの問題もあろうが…。

グリップセンサー
 例えばA1のグリップセンサーはデザイン中心としか言いようがない。私の場合、ちょうど指の関節が位置するためか、センサーがONにならないことが多い。フィルム一眼のスタイルをそのまま小型化した弊害だろう。EVFオートにしていると、「あれ、電源入ってなかったっけ?」などと上面液晶パネルを確認することがしばしば。しかも、ディスプレイ切り替えレバーは「あそび」が大きく、耐久性に不安が伴う。センサーは手のひら側、あるいは指先の腹のあたる部分の方が良くないか? こうした部分を上手くまとめるのが現代の機能美と思うのだが。
 例えば、平行破線の現在のスタイルではなく、コニカミノルタのロゴマークにしてグリップ側面に配置するとか。その昔、ニコンではF-401がそんな感じでしたね。私の感覚はおかしいですか?

背面液晶
 背面液晶もカバーを用意して欲しい。通常のファインダー(A1ならEVFだが)だけを利用する人のために、反転収納を可能にするぐらいはやってほしい。子供写真の撮影などは、デジタルカメラだと知られたくない時もある。何しろ、「見せて〜」ぐらいなら可愛いが、普通の人はこの時にカメラを握りたがる。そして自分が映し出された液晶画面をベタベタ触る子供(に限らないが)もいれば、ひどい時にはレンズに指紋をつけるガキンチョもいるのだよ。

メディア室の蓋
 さらに、連続撮影しているとメディア部分がかなり熱くなるので、メディア室の蓋を金属製にするとか、その上で細かなフィン形状の表面処理(例えばズームリングのゴムのデザインような)で放熱性とグリップ性、質感をさらに高めるとか、そんなことができないのだろうか。

防塵防滴
 ぜひともおねがい。何しろ、常時携帯型デジカメなんだから。一眼にしても、防塵防滴のほうがうれしい。EVFや液晶パネルの裏にフレキシブル基盤が丸見えになっているのは、やはり気分がよろしくない。側面のスピーカーも、速攻で雨滴が侵入しそうである。それから、細かいことだが電源ボタンにはパイロットランプをつけて欲しい。どういうことかというと、サッと撮影してカバンに放り込みたい時、電源のON/OFFの確認が容易になると思うのだ。電源ボタンを見るだけで「メディアへの書き込み後に電源が切れる」ということが分かれば、そのままカバンに直行させることができる。とりあえずA1では、手ぶれ補正ボタンのランプがこの役割を果たしてはいるが。

折畳式内蔵フラッシュ
 パンタグラフというかA1の背面液晶のような構造を想像して欲しい。内蔵フラッシュがポップアップするだけでなく、必要であればボタンを押して係り止めを解除することで、ベース部分をさらに引き上げることができる構造。フラッシュの発光管が高くなるので、レンズフードによるケラレを防止できる。さらにアームの形状を工夫すれば、内蔵フラッシュながら上方へのバウンス、前方に倒すことで簡易マクロフラッシュにもなる。便利じゃないか?

リモコンレリーズ
 これはα用と兼用(レリーズソケットは古いまま、レリーズ部分にリモコン機能を搭載)で開発してもOK。オリンパスのリモコンレリーズって、遊び写真には結構便利だったのだ。それから、PDAのような形状で外部ファインダー(液晶画面)とコマンドダイヤルがついたレリーズ(コマンダー)も、あれば便利だと思う。ブラケットを利用してカメラとコマンダーを固定したり、ワイヤレスでレリーズできれば、応用も広がるだろう。

遊び心あるプロダクトに期待
 DiMAGE A1は、コンセプトとしては良い仕事をしてくれたとコニカミノルタに感謝したい。それでも、もう少し遊び心を持とうよ、と技術者に言いたくなる点もある。このカメラは例えば、擬似シャッター音を出したりできるのだが、「α-7」と「CLE」、「なし」の3種類からしか選択できない。パソコンに保存してある効果音を使いたいと思う人だっているのではないか? あるいは、コニカミノルタのサイトにユーザーが独自に録音した効果音をアップロードして公開・共有するとか、そんな楽しさがあっていいと思う。私なら、ピカチュウの声をダウンロードしたい。もちろん、AF合焦音が「ピカーッ」で、シャッター音が「ピカチュウ〜」である。ブラジルではフラッシュの光を怖がる子供が多いので、ブラジルでも人気のピカチュウボイスは需要がありそうだぞ(著作権という問題もあるけれど)。そうして子供が写真に馴染めば、写真人口の拡大にもつながる(って言い過ぎか?)。

 脱線したが、つまりは「カメラってハード部分の理屈だけじゃないよね。撮影して楽しめることこそ本道だし大切なことでしょ」というところを分かって欲しい(もちろん、実際の撮影そっちのけでスペック談義に走るカメラマニアにもね)。若干の画質を犠牲(というのが私の評価)にしてこのサイズと操作性、ズーム比のプロダクトを完成させたコニカミノルタの技術者は、「そんなこと、とっくに分かってまっせ」と言うかもしれない。しかし、コストの問題もあるのだろうが、防塵防滴といった部分など、「小型軽量でいつでも持ち歩けて、カメラを自在に操作しながら撮影を楽しむことができる、映像を残すことができる」というコンセプトを可能な限り高めていただければ、A1が持つ「撮影力」の部分がさらに輝きを増すと思うのだ。

 ま、こうした要望はA1後継機、そしてデジ一眼への期待として楽しみに置いておこう(別に他社でも良いわけだけど、コニカミノルタが一番、このあたりを理解してくれそうな予感があるのでな)。そして当面は、α-9とDiMAGE A1で楽しみたい。「今撮影しないで、いつ撮影するのか?」。そんなメッセージを発散するA1が、時として日常に忙殺され押し流されてしまう私自身に、撮影力を与えてくれるのだ。私にとっては、モチベーションを高めてくれるギア、と言えるかもしれない。

 「今年は写真を撮るでぇ〜!」という気になった。もちろん、その写真とは「親ばか写真」のことじゃないぞ。

つづく

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