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DiMAGE A1 その後(2)

2004年3月13日

サンパウロ在住 美代賢志

 以上は、ユーザーで対応できる部分の話。とは言え、キヤノンのEOS-1シリーズやオリンパスのE-1が防塵防滴構造を採用し、雨の中でもこうした負担をユーザーに求めないのがあたりまえ(?)になっている現在、やっぱりDiMAGE A1は「カメラをつくる側の意識として、時代に遅れている」と思う。それはつまり、「電子機器は屋内で使うもの」、あるいは「カメラは水(雨)と相性が悪い」という発想を変える時期に来てないか?ということ(実際問題として、コニカミノルタがそんな認識を持っていないとは思わないし、もし持っていないとしたら、それこそ大変だが)。

 もっとも、「その分だけ価格が安い」という意見も、ある意味では正しい。つまり、「ちょっとした工夫で雨天でも使え、さらに安い分、最新型にどんどん買い換えれば良いじゃないの」と。私は頻繁に買い換えたりしないので(何しろ、C2000Zを最近まで使ってたぐらい)、頑丈なほうが好きだけどね。

 

そして、カーニバルで使ってみた

 結論から言うと、「DiMAGE A1を、よく投げ捨てないで持ち帰ったな」と思う。まぁ、そこまで書くと行きすぎだが、それぐらい、カーニバルの撮影とは「相性が悪かった」。とくに不満を感じないお手軽撮影の時とは雲泥の差。ここまで落差があるとは想像だにしなかった。

 以下、できるだけ具体的に、DiMAGE A1のハードに関係する問題と、ソフトに関連する問題を書いてみたい。比較しているのは、あえて銀塩一眼レフのα-9。

 

ハードの問題

タイムラグ
 ミノルタのカメラは歴代、α-9も含めてそれほどタイムラグ(とミラーによるブラックアウト)が短い方じゃない。のだけれど、DiMAGE A1はちょっとありすぎ。お手軽撮影だと全く気にならないが、カーニバル撮影では、「忘れた頃に光ってんじゃねぇ!」と言いたくなるのでありました。これが、今回の不満の諸悪の根源じゃないかな、と思ってます。フラッシュ無しで150ミリ秒として、フラッシュのプリ発光も含めれば300ミリ秒ぐらいいってるんじゃないでしょうか。まさに「永遠」ともいえるタイムラグ。「そりゃ、いくらなんでもオーバーな表現だぜ!」という人もいるかもしれないので、ちょっと数字を挙げてみよう。つまり一眼レフとしてはあまり高速とはいえないα-9のタイムラグはおよそ70ミリ秒と言われていて、秒5コマの連写能力があるから1枚の撮影に200ミリ秒かかる。タイムラグは厳密に言うと、シャッターボタンを押し切って(スイッチが入って)シャッター幕が動き始めるまでの時間だから、両者を単純に足すのは誤りだが、それでも270ミリ秒で次の撮影に入ることができることになる。つまり、DiMAGE A1が1枚写し終えるまでに、α-9なら2枚目の撮影がスタートしている。気分的には銀塩で「はい、じゃ、次!」と思った頃にDiMAGEのフラッシュが光る。それぐらい違う。

撮像AFと薄暗い中での動体撮影
 会場はそれほど薄暗いとも思えない(ISO100時で、F2.8 1/30ぐらいで、普通の屋内撮影よりも明るい)のだが、AFのスピード、食いつき、いずれも合格点は与えられない。微妙なピンボケや撮り逃したものも含めれば合焦率は1/2以下だったといっておこう。それから、暗くなるとAF時に一瞬、EVF等の画面が固まることがある。こうなるともう、動体(たって3メートルから50cmぐらいの範囲内を普通に歩いている人間なんだけどね)撮影は難しい。EVFのお陰でMFが事実上できないのだから致命的。
 あと、撮像AFの問題だと思うが、結構、周囲のコントラストの高い部分にフォーカスが引っ張られたりする。遠景もアレレな時があるが、アップはさらに厳しかった。「動く被写体を35mm銀塩の85mmをF2にして追いかけてるんじゃないんだぜ」と、EVFを覗きながら憤慨したのも事実。
 私と被写体の両方が動きながらの撮影であるというのが、最大の原因だろう。しかし、より被写界深度の浅い銀塩一眼レフ、例えばα-9に85mmF1.4をF2.8でをMFで使っても合焦率はもっと上だ。というかα-9自体が、9000をフルマニュアルで使ってきた私にとってMF後継機という位置づけだし、F2.8で使うのは、24mmから200mm間でマニュアルで露出を揃えるため。
 もっともカーニバルの最後の最後、空が白んでくると、A1はそれまでが嘘のように合焦し始めた。

動体とフラッシュ
 前回もケチョケチョに書いたプリ発光によるフラッシュ撮影だが、やはりと言うべきか、カーニバルでは完敗であった。シャッターを押し切ってからプリ発光、そして本発光と撮影という流れで撮影されるのだが、次のような問題がでた。
1) 動体では、プリ発光と本発光で撮影距離が異なる
 つまり、プリ発光と本発光の間隔がメチャクチャ長いので(上に書いたとおり)、プリ発光時の状況とは環境(構図、撮影距離)が変わっている。だから、プリ発光でフラッシュの発光量の制御を行う方式では、露出にかなりバラツキが出る。シャッターを押した時点で1.5mぐらいの距離にいた人が、撮影時点で70cmぐらい、というのはザラ。タイムラグが大きいから余計にズレる。
 屋内をチョコマカと走り回る子供のスナップ(記録写真)を撮影しようと思っている人は、使い方を研究(外部調光可能なフラッシュや、バウンス+マニュアル発光)した方が良いかもしれない。
2) ベストなタイミングは(少なくとも私には)絶対につかめない。
 クルクル回転するバンデイラやバイアーナの躍動感をとらえつつ表情も掴む(スローシャッターで顔がこちらに向いている瞬間を写す)というのは、A1においては神業の世界。それ以外にも、ちょうどポーズを決めている瞬間を写すとか、私には無理だった。半年に満たない私のA1修行歴では訓練不足ということか? でも、そんなカメラに慣れたくも無い。素直に、C2000Zのように一発で調光してくれ、と言いたい。
 もちろん、フラッシュを使わなければ、こんな問題はほとんど無い。

約90度の回転分、銀塩よりタイムラグがある

EVFと動体って相性悪すぎ
 ミノルタの銀塩一眼レフのブラックアウト時間も結構ある。それぐらいは許せてきた私だが、EVF採用のA1は撮影後、「ところで被写体、どこ行きました?」と訊きたくなる。そう言えば、C2000Zで撮影していた時も、構図のツメが甘くなるのを覚悟で光学ファインダーを使って撮影していた。フラッシュのシューに取り付けるような、レンズにあわせてズーミングするモーター内蔵の光学アクションファインダーが欲しい。
 もうひとつ、EVFの画像は「例えわずかであろうとも絶対にリアルタイムで表示されることはない」のだから、両目を開けて、EVFの構図と実際の被写体の動きを追わねばならない。これは結構、辛い。

操作部材の配置
1) 後ダイヤル 知らない間に結構、回っている。これは力を入れて握ったためか、右方向に回転していることが多い。普通にグリップを握っている状態で、シャッター以外の操作部材に指があたる、というのはイカガなものだろうか。
2) モードダイヤル 同様のことはモードダイヤルにも言える。位置がずれると、AFのフォーカスポイントの表示が画面から消える。最初はカメラが暴走したと思って、電源を切ったり、バッテリーを抜いたりした。それでも復帰しないので良く見ると、モードダイヤルが動いていたのに気付いた。ただし、この状態でも撮影だけはできた。しかし後日これを再現しようとするとできない。雨による湿度(内部配線の結露?)によるものだったのだろうか。

 

ソフトの問題

フリーズ
 ひと晩の撮影(午後10時から翌午前8時)ごとに、少なくとも1回はあった。そのたびにバッテリーを引き抜いて対応。雨による湿気(結露はしてなかったのだが…)の影響だろうか。

フラッシュの暴走
 これは普段利用している旧型でも頻繁に発生する。原因は不明。銀塩一眼レフで同じフラッシュを使っても、同様の症状を経験したことは無い。
 で、どういうことかというと、連続して撮影していると(連写という意味じゃなくて、シングルでだいたい10枚から20枚程度をパシパシ連続的に写していると)、発光量を例えば1/2などとしていても突然フル発光し始める。5600HSDの場合、TTLにしていてもメチャクチャオーバーな調光になる。原因は不明。対処法は、フラッシュを本体から外し、フラッシュの電池を引き抜き(蓋を開けるだけでいい)、フラッシュをカメラに装着してそれぞれの電源を入れる。これは、かなり頻繁に(ひと晩に3、4回)発生した。とくに連続撮影している時というのは、「ええ感じやんか!」と気合が入っている時が多いので、フラッシュの暴走には本当に頭に来た。一瞬を争っている時に、まさにその努力の全てを無駄にしてくれる。

ボタン操作
 ファンクションダイヤル中心のボタンを押すとなぜか、メニュー画面を表示することが結構あった。何らかのショートカットがあって知らない間にボタン操作しているのか(って、ショートカット以前にボタンひとつでダイレクトにメニュー画面は呼び出すことができるのだが…)、これまた、雨によって内部回路が結露していたのか…。そうだとすると、DiMAGE A1は、雨天にはかなり神経質になった方が良さそうである。当たり前だが濡れてはいない。つまり、ビニール袋の中(もちろん下側はオープンで通気性を良くしている)の湿気でやられている、ということ。信じられないが、本当だとすると弱すぎないか? 何らかの操作ミスも考えられるので、断定はしないけども。

補遺:2004.08.07
 とりあえず、フラッシュ(5600HSD)を装着して、以下の操作を行うとメニュー画面が表示されることがわかった。
1) 本体「露出補正ボタン」+フラッシュ「電源ボタン」
2) 本体「ファンクションダイヤル中央のボタン」+フラッシュ「電源ボタン」
 フラッシュの発光と非発光の変更に併せてホワイトバランスも変更していたことが、メニュー画面表示の原因かもしれない。

 

良いところもあったわけで…

高倍率ズーム
 雨の中でレンズ交換すると思うとぞっとする。これは正直、DiMAGE A1(だけじゃないけど)のレンズ固定高倍率ズームが役立った。

手ぶれ補正
 これも、このカメラだけの特徴ではないです。被写体ブレは防げないけれども、結構、役に立ってくれた。

仕方なく片手で撮影。手ぶれ補正のお陰

白が白く写る(マニュアルホワイトバランス)
 あたりまえだけど、やっぱり良いよね。これも、DiMAGE A1だけの機能というわけではない。もう少し踏み込んで書けば、デジタルによるカーニバル撮影では、AF精度と高ISO(ISO400から800)が実用性能を持っていれば、フラッシュなしでの撮影が充分に可能ということ。このカメラではISO100以外で使う気がしなかったのでフラッシュ撮影した。あと一歩の部分、つまりISO400で使える画質ならば、つまりタイムラグ等の問題、フラッシュの暴走の問題がユーザーサイド解決できる。そしてこうした表現は、カラーバランスが崩れる銀塩フィルムでは不可能なこと(カラーメーターとフィルターを使えば別だけど)。

こちらがフラッシュあり こちらがフラッシュなし

※どちらもホワイトバランスは、それぞれの使用条件下においてマニュアル設定しています。

 どうです? 私は、フラッシュ無しの方が良いと思う。フラッシュのほうは、クリップオンによるフラッシュ撮影が持つ本来的な問題が出てると思う(フラッシュの露出がややオーバーというのもあるし)。フラッシュ無しは色も自然で雰囲気があると思うのですよ、私は。もちろんクリップオン1台での撮影だって、基本的な条件さえ整えてやれれば、下の写真ぐらい自然になります。モデルは娘(例によってプリ発光によるタイムラグを無くすため、フラッシュは5400xiをマニュアル発光、オートメーターWF使用)

…つまり、フラッシュだからダメ、なわけじゃない

 ついでに書いておくと、DiMAGE A1のマニュアルホワイトバランスは3種類メモリーできる。No.3が私の場合、屋内で娘の写真を撮る時のもので変更しない。No.1とNo.2は、その場限りのホワイトバランスという感じで撮影で必要性が出た場合に変更と設定を行うモードになっている。で、カーニバルの時は「フラッシュあり」と「フラッシュなし」を事前に登録して、ダイヤルひとつ(とフラッシュの電源のOn/Off)で迅速に対応できた。このあたりはやはり、(おもちゃのようなC2000Zとは違って)使いやすい。もしかすると、「今のデジタルカメラでは、複数の登録機能を使い分けるぐらいジョーシキ」なのかも知れないけれど…。

 

とりあえず

 高感度(DiMAGE A1は実用上ダメだが)とホワイトバランスを組み合わせることで、デジタルは銀塩にできない表現ができる。それを改めて認識できたのが、今回の成果かもしれない。それと、普段の撮影とのギャップに関しては、このカメラは、「できること」と「できないこと」の境界が撮影スタイル別にハッキリしているのだとも言える。つまり、「あれもこれもできるけど中途半端」というスタイルではなく、「あれはできるけどこれはダメ」と。ある意味割り切った性能と言うかその範囲内で必要なものは、過不足なく備えている。今回は計らずも、その限界を示してくれることになった。本来の購入目的である「お手軽」という用途では、DiMAGE A1はかなり使いでがあるんだけどなぁ…。

(カーニバル写真はこちら
つづく

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